「リチャード・ジュエル」を君は見たか?

そんなに映画を数多く観ていない私でも最近のアメリカ映画を何本か思い浮かべたのだが、あのクリント・イーストウッドが役者のように「ピクセル」の監督になりきり、この作品を撮ったと想像しながら過ごす時間はとても楽しい人生のひとときであった。

「奇跡を起こした人間は大昔も今も捕らえられる」と言ったのは誰だったろう? というかそれは私がこの映画を見て思ったことで、どうせ誰かが言っているんだろうと思っていったまでのこと。 映画のタイトルにもなっている、リチャード・ジュエルという男が起こす奇跡の物語。そんなふうに物語を要約しても罰は当たらないんじゃないか。

「僕は正しいことがしたいんだ」とつぶやく主人公は副保安官をクビになった過去をもつ銃マニアで周囲の人間から蔑まれがちな太った白人。 彼のまるい身体がぴょんぴょん飛び跳ねるたびに笑いを誘うのだが、涙をこらえることができない。悪態ばかり吐いている友人の弁護士とのかけあいも同様である。

宣伝でよくいわれているSNS云々の話はそんなに関係ないような気がする。真実もそれほど。 無実の人間が罰せられることに疑念を抱くのか?ということと、それに気づいたときにどうするのか?という問い。「何か正しいことがしたい」というのが人情だろう。

実話に基づいて作られたというこの映画。 リテラシーもなにもあったものでなくて我ながら笑ってしまうんだけれど、観終わった後、リチャード・ジュエルという男の魂に触れてみたいなんて思ってしまった。 そんな敬虔な気持ちにさせられた映画が今まであっただろうか? 私の記憶にはない。

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仲間はいらない。

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