じごくのハサミ、コロナ、そして日本のさまようたましい

顕微鏡で見た姿が太陽のコロナに似ているという事で名づけられたという例のウィルス。

伝染病のリスクが今までなかったわけではない。私はある程度歳をとっているのでわかっていた。そして忘れていた。世界の交通が盛んになれば伝染病のリスクが高まることも、新たな病原体が出てきたときに人類が対抗できる術は少ないということも、前の世紀末の時に盛んに言われていた。

もうすでに「みんなでぼうけん」は延期になっている。

理解はする。

しかしこのドラクエウォークというゲームが、はたして感染リスクをそれほど高めるものなのだろうか? 散歩するだけで他人と接触することなくできるゲームである。家の中だけでできるゲームのほうが感染リスクは少ないことはわかりきったことではあるが、むしろそうではないドラクエウォークにこそゲームの可能性があるのではないだろうか。

いちど止めたら再開するのは困難を要する。しかし、継続する困難にくらべたらたいしたことではないだろう。スケジュール通りにすすむなんてバカは論外なんだけど、ガチャが当たったからうれしいっていうだけのゲームじゃないことを証明する機会が、いま訪れていると考えているのは私だけではないはずだ。

私はプレイヤーたちを信じたい。

そんな思いを胸に、今日はカニを取りに少し離れた大きな河へと出かけた。

やはり街の人通りは疎ら。土手沿いの道を超え水のある方へと踏み込んでゆく。

しばらく前に起こった洪水の爪痕の残る寒々しい景色。舗装されていない道で自転車に乗った老人とすれ違う。

そこに住まう人の姿は見えないが、生活を感じさせる柵やテントがちらほらと。シートの上で空き缶を乾かしている。

放置された困窮。

同伴者が恐怖を感じ戻りたがる。彼らも恐怖や屈辱を感じていたかもしれない。そこにはおらず出歩いていたかもしれない。外出自粛要請が出ているにもかかわらず。

私は笑っているが、この笑いの対象はわたしとあなただ。

彼らは誰も助けてくれないことを知っているが、人を傷つけたりしない。


何故かわからないが、歩いているとこういうことが私にはよく起こる。





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仲間はいらない。

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