DVD発売記念!「犬ヶ島」のあらすじ

ウェス・アンダーソン監督の「犬ヶ島」という映画を御存知でしょうか? 日本が舞台のストップモーション・アニメで愛くるしい犬たちが登場することを、テレビのCMでやっていた記憶があります。坂上忍という、昔のアイドルみたいな名前のタレントが出演していました。観てはいなくても、なんか聞いたことあるっていう人は多いかもしれません。

DVDが発売中です。ワタシは映画館で2回観ただけなので、この機会にしっかりリピートしておこうと思っています。


ところで、犬には従順なイメージがあります。ワタシは吠えてうるさいし咬みつくから嫌いですが、多くの人間が犬のことを好きになりペットにする理由に、大きな部分を占めているのではないでしょうか。その一方で、同じイメージが人を侮辱するときに使われることもあるようです。

日本が舞台で、犬。犬の島。アメリカの犬。日本はアメリカにいまだに占領されていて、独立していない。アメリカからいろいろなものを押し付けられた。確かにそうかもしれない。日本国憲法、民主主義、フリーダム、ウーマンリブ、ウッドストック、ロックンロール、サーフアンドスノウ、コカコーラ、マクドナルド、スターバックス、禁煙、ウィンドウズ、アップルミュージック、ソウルミュージック、マイケルジャクソン、JAZZ、ブロードウェイ、ハリウッド、ファックユー、サノバビッチ、ゴウランガなどなど。そして、押し付けられた制度や文化を、信じたり好きになったりするのは、愚かなことだと言いたげな人達。役に立つ部分だけ利用するのが、正しくて聡明な人間だという思想。

とまぁ、タイトルからそんなことを連想します。あまり重要なことではありませんが、関係なくもないと思うので書いておきました。


さぁ、気を取り直して次へ。YouTubeで映画の冒頭部分が公開されています。見たことのない方は、ぜひ見てみてください。

どうです? この太鼓。鼓舞されるとは、まさにこのことでしょう。何を鼓舞されているのかあまりはっきりしませんが、とにかく興奮します。そのまえに神社がでてきて、神話みたいな歴史が犬によって語られますが、このモチーフは劇中で何度も登場するので、覚えておいたほうがいいような気がします。それから、俳句がありましたよね。


人間に 我背を向ける 窓の霜


俳句は苦手だし、よくわからないので「窓の霜」をGoogleで調べてみました。窓についた霜の写真などと一緒に、エミリー・ディキンソンの「窓に張り付いた死の霜」という詩がhitして読んでみました。なにか関係がありそうです。便利な時代ですね。

長くなってしまいそうなので、ここからは言っておきたいことを手短に簡潔に述べようと思います。


とつぜんですが、アレックス・コックス監督の「サーチャーズ2.0」という映画があります。ジョン・フォードの名作「捜索者」の続編を謳う冗談みたいな作品なのですが、この映画の中に焚き火が出てくる。その焚き火の後はなにか映画の様子がおかしい。登場人物の見る夢なのか、それともネタがつきてでっち上げた出鱈目な話なのかわかりませんが、とにかくおかしい。自分なりに出した結論は、フィクションの中で作り出した仮想現実なのではないかというところに落ち着いてます。今のところ。

ワタシはいつも映画のストーリーをあまりちゃんと観ていないのですが、これを観てからは油断は禁物だと思うようになりました。

そして過去のウェス・アンダーソンの映画にも同じようなところがあります。「ダージリン急行」ではとつぜん列車内の席の配置が鏡に映したように逆になり、「ムーンライズ・キングダム」においては少女がカメラに向かって “part 2” とつぶやく。

「犬ヶ島」ではどうでしょう。DVDを買うときに隣に置いてあった、雑誌「ユリイカ」に載っている監督のインタビューによれば、この映画の“20年後”とは作品内での“今”から20年後ということで、昔の人が想像した未来のようなものを意図しているのだそうです。油断は禁物です。要するに、この映画の物語はフィクション中の“今”というものを隠している。

坂口安吾は、歴史はいつも事実を隠すために書かれるといいました。この物語にも歴史が登場します。はたして、映画の冒頭の歴史が隠しているものは何なのか。“歴史”と“今”はどのように関係しているのか。映画「犬ヶ島」は何を隠しているのだろうか。


なんだかややこしい話になってしまいました。あらすじを書いて終わりにしようと思います。



いまから20年後の日本。ウニ県メガ崎市ではドッグ病が蔓延、人間への感染が怖れられていた。市長の小林ケンジは市庁ドームで行われた深夜の集会で、飼い犬も野良犬も、すべての犬を“ゴミ島”へ追放すると宣言する。“犬ヶ島”である。集会では追放される犬の第一号も発表された。拍手をする観衆の前に、小林家の護衛犬スポッツが「悪役補佐」のメイジャー・ドウモに連れてこられるのを、暗がりからじっと見ている少年が…。

六か月後。追放された犬たちは、ゴミを漁り病気に苦しみながら島をさまよっている。そこに飛行機が墜落する。中から出てきたのは一人の少年だった。


第一部 リトルパイロット

その少年を助けたのは、5匹の犬。レックス、キング、ボス、デューク、それから「この島では誰もあきらめない」と吠える野良犬のチーフ。スポッツという犬を探しに来たという少年を、彼らは小さな檻の前に連れていく、中には犬の骨が。少年の目に涙が浮かぶ。小林アタリ(12歳)のフラッシュバック。

三年前、両親を新幹線の事故で亡くした少年は、小林市長の養子になる。大けがを負い病院のベットの上にいる彼のもとへ、メイジャー・ドウモが護衛犬であるスポッツを連れて来た。気の合うやつは目でわかる…。少年が手をなめさせて頭をなでると、悪役補佐が恫喝「ペットではない」。少年と犬は通訳装置の付いたイヤホンとマイクで二人だけの会話をするのだった。涙を流しながら…。

話は現在にもどり、アタリ少年のぬぐった涙が乾く頃には、スポッツが死んでいないことが判明する。そこに突如として現れるドローンとロボット犬。少年を捕まえに来た「市民タスクフォース」との戦いは、傷を負いながらもなんとか勝利する。その夜,アタリは犬たちを前に演説を始めた。「人間と犬の戦争になるよ」「奴らが僕らに何したか見てみろよ!」。市長も若い時はこんな風に演説したのだろうか? 野良犬のチーフは我慢できずに演説会場を飛び出すが、そこで「涙を流さない」孤高の雌犬ナツメグと出会い、少年を助けてあげてと言われるのだった。演説を聞いていた犬たちは、アタリの眠った後、彼についていくかどうか相談を始める。レックスが言う。「彼は一人で飛んできて島に墜落した、理由は一つ。愛犬を探すため。そんな努力をした飼い主は、僕の知る限り一人もいない」…。少年と一緒にスポッツを探すことが、多数決で決まった。

一方メガ崎市では、野党科学党の市長候補である渡辺教授が軟禁状態となっていた。そのことを伝えるテレビの短いニュース映像には、研究所を襲撃する構成員のスモウレスラーたちとドッグ病の治療薬らしきものが映っている。メガ崎高校の学生新聞「The Daily Manifesto」編集部では熱い議論が交わされている。交換留学生のウォーカーは小林政権の陰謀説を主張。「罪もないペットを一掃するためよ」。証明できるのかと問われ、視線を向けた先にはハッカーのコーナー。このハッカーの顔どこかで見たことあるんだけど、誰か知ってる?

今日のところは、この辺で。最後まで書こうと思ったけど、思ったよりも長くなりそうです。また後日。


雑誌「ユリイカ」にはいろいろと難しそうなことが書いてありました。まだ全部読んでいませんが、成程と思うことがいくつかありました。顔がメイジャー・ドウモに似ている蓮實重彦という人はこの映画を「ホークス的なコメディ」と評しています。そうなんです。誤解しないでください。リラックスして下さい。「犬ヶ島」はコメディ映画です。ホークス的っていうとこが気になりはしますが、まぁ、まずはDVDでこの映画を観ましょうよ。なに? 配信もあるって? それはワタシの知ったことではない。


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仲間はいらない。

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